作品名:「営みの森〜NARUO〜」

作品種別:インスタレーション

作品サイズ:500(W)×500(D)×866(H)

作品材料:木、紙、アクリル絵の具、LED電球、鉄道模型、ほか

※阪神電車「鳴尾・武庫川女子大前」駅前広場の時計台に新設されたアートボックス第1回展示のために制作

作者:藤井達矢(武庫川女子大学教育学部教育学科教授・美術家)

<作品制作の背景>

 山の麓には森とともに生きる人々の暮らしがあります。里山は、自然と人の暮らしが重なるゆるやかな境界領域といえます。飼いならされた自然ではなく、また野生の自然でもない、共生の空間なのです。さらにいえば、都市に生きる我々も日々の暮らしの中で、森の、里山の恵みを享受しているはずです。

 仏教用語に「円融」とあります。それぞれの事物が各々を保ちながらも一体となって融和している様をいいますが、我々は満たされた日常にあって、その丸くすべてを包含しつながる「円」を忘れてはいないでしょうか。

 しかし度重なる災害、世界中で止まない紛争、そしてコロナ禍にあって、その逆境の中でそれぞれが何をなすべきか真剣に考え始めています。未だに先は見えませんが、おぼろげに希望の光も差し込みつつあると願いたいのです。

 このような作者の様々な側面から社会を見た時に日々感じている違和感や焦燥感、その一方で抱いている希望など、それらが重なり合った混沌とした思いを形に表し、作品を通してともに考える機会になればと思います。

<作品内容の説明>

 主要なモチーフは樹木のイメージです。アイヌの「イナウ」や彼岸に供える「削り花」に倣って祝箸を一本一本削って作りました。そもそも祝箸は両端が細くなっており、「神人共食」として下端は人間が、上端は神様が使う特別なものです。この箸を素材とすることで、数多の事象が接続する様を表します。

 これらの樹木をクリスマスツリーのような形態に生やしていますが、これは恵みの山であり森であり、下へと降りるに従って里山そして都市へと接続していきます。床面にはここ鳴尾の地が広がり、模型の阪神電車(かつての赤胴車をイメージしていますが、忠実なモデルではなくあくまでも象徴)が走り、鳴尾の一本松も見られます。

 山の頂上から鳴尾の地に至るまで、樹木の間に高圧電線の鉄塔や電柱を模した祝箸が紛れていることがわかります。これも1つポイントです。日常生活に欠かせない電気、日常の足としての電車、ライフラインの1つとして電気の存在はあまりにも大きく、特に災害時や原発の課題も含めて大きな影響を持つものです。今改めて電線を見上げてみると、当然のことながら町中に張り巡らされ、高い山をも越えて電気が運ばれています。我々は見慣れた光景ですが、ヨーロッパに住む友人のアーティストたちは日本に来るたびに「まるで分厚いカーテンがかかっているかのようだ」と言います。そう言われて意識し始めると、町も里山も山にも森にも電線が絡みついているようにさえ思えてきます。しかしそれも、人間の営みを支える大切なものであって、その線が命をつないでいます。

 木々の合間から漏れる光は、LED電球が発しています。木々を照らし町を照らすこの光は、果たして希望の光なのでしょうか?光があれば必ず影があります。周囲に映る木々の影、我々はそこに何を見出すべきか… 我々が考え込んでいる間もずっと、その下で走る電車は、「円」を描き続けているのです。

※様々な色のLED電球で樹木の影が揺れ動くようになっています。夜間にもご覧ください。なおこの作品の電源は、阪神電車の始発〜終電に合わせてON-OFFしています。

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